ブラジルはコーヒー大国

コーヒーの起源はエチオピアやアラビアと言われています。コーヒーが登場する最も古い文献は、900年頃にアラビアの医師ラーゼスが残した医学集成とされています。当時は患者の消化や強心などに役立てられたほか、体力回復や眠気覚ましなど一種の薬としても珍重されていたようです。アラビア半島では長らく、夜間も宗教儀式を執り行う修道僧が珍重し、イスラム教寺院で門外不出の秘薬として扱われます。13世紀になって次第に一般のイスラム教信者にも広まり、この頃にコーヒー豆を煎って味わうようになったようです。

コーヒーは煎ることで香りと風味が良くなり、ますます好まれたと考えられます。1450年頃にペルシャでコーヒー豆を焙煎し、砕いて煮出して飲むようになったと伝えられています。1510年にはエジプトのカイロに伝わり、コーヒーを飲んで寛ぐコーヒーハウスのような場所も誕生したようです。16世紀には現在のトルコ、イスタンブールに最古のカフェとして知られるカフェ・ハネが誕生しています。

やがてコーヒーはヨーロッパへ渡ります。トルココーヒーがベネチアへ伝わったのが最初とされています。17世紀になるとイギリスでのコーヒーハウス誕生や、フランスでのカフェオレという新しい飲み方が誕生するなど、ヨーロッパ全土に広く定着していきました。

ブラジルでは、1727 年に仏領ギアナから最初の苗木が北部のベレンに到着しました。当初、気候のせいで栽培は上手くいきませんでしたが、後に南東部のリオデジャネイロ州、サンパウロ州、ミナスジェライス州で栽培されるようになり、主要な輸出品の一つにまでなりました。

帝政期の19 世紀を通じて、リオデジャネイロとサンパウロはコーヒーで栄え、生産量は国内市場の80%を占めるほどでした。コーヒーの栽培・生産には多くの働き手が必要で、その過酷な労働を担ってきたのが150万人ともいわれるアフリカからの奴隷でした。1888年の奴隷制廃止後は主にヨーロッパ系の移民、日系移民がそれに取って代わりました。

ブラジルは 1880 年に世界最大のコーヒー生産・輸出国になりました。コーヒー生産はブラジルで最も重要な経済活動となり、今日までブラジル経済の発展や工業化に貢献しています。

コーヒー豆は年間で200万~300万トンも生産されており、なんと世界のコーヒー豆生産量の約30%がブラジル産です。

20世紀に入り、ミナスジェライス州、サンパウロ州だけでなく、エスピリトサント州、バイーア州、パラナ州など他の州でもコーヒーが生産されるようになりました。特にミナスジェライス州南部はブラジル最大のコーヒー生産地となり、高品質な品種もここで作られています。なんだか、プロポリスの生産地とも重なりますね。

コーヒー豆は主に、エチオピアを原産とする歴史の古いアラビカ種(Arabica)と、19世紀にコンゴで発見された比較的新しいカネフォラ種(Robusta)があります。

ブラジルの各地域で栽培される品種は下の地図のようになります。赤が集中している場所がミナスジェライス州です。

筆者はミナスジェライス州南部のプロポリス生産業者を車で訪問することが多く、道中のコーヒー畑の様子をいつも眺めています。コーヒーの主な開花期は10月から12月で、収穫は5月末から8月にかけて行われます。

収穫期になると赤いコーヒーの実がたわわになったのを見ることが出来ます。そしていつも生産者のスタンドで挽きたての新鮮なコーヒーを買い求めます。(*^^*)

ミナスジェライス州南部のコーヒー畑
収穫期のコーヒーの実

コーヒーは水に次いで世界で2番目に多く飲まれているほどポピュラーな飲み物です。ブラジルにおいてもコーヒーは、とても重要な役割を果たしてきました。現在、ブラジルはコーヒーの生産・輸出で世界 1 位、コーヒーの消費で 世界2 位にランクされています。

サントスはブラジル東南部の海岸沿いに位置し、大都市サンパウロから約50kmに位置する南米最大の港で、世界最大のコーヒー輸出港でもあります。ブラジル全土からコーヒー豆が集まり、ここから全世界に向けて旅立って行きます。1908年、日本人のブラジル移民が始まりました。彼らが最初に辿り着いたのもこのサントス港。今では約150万人もの日系人がブラジルに暮らしています。

旧市街地にある石造りのコーヒー博物館は、もともとは1922 年に開設されたコーヒー取引所でした。ブラジル全土から集まった出荷用のコーヒー豆の選別や取引きが行われていました。現在、内部にはコーヒー関連のいろいろな物が展示されています。

旧コーヒー取引所
(現コーヒー博物館)
旧コーヒー取引所入口
サントス港の風景

ブラジル産のコーヒーは、生産地域や品種、精製方法によって様々な味わいが楽しめますが、一般的にはバランスの取れた酸味と甘味が特徴です。ほどよい苦味と爽やかな酸味、コクも感じられ癖がなく飲みやすいコーヒーといえます。

筆者のお気に入りは、アラビカ種の写真の銘柄。ミナスジェライス州南部への出張時には、いつも大人買いしています。フルーティーな風味と程よい酸味でとても上品な味わいです。

筆者お気に入りのコーヒーブランド

冒頭の「コーヒーの歴史」でも述べたように、コーヒーはもともと「薬」として広まりました。コーヒーに多く含まれるカフェインやポリフェノールには様々な薬効があることが知られています。では、健康にどのような効果が期待できるのか、簡単にまとめてみました。

  • 覚醒作用により、頭をすっきりさせて集中力を高める
  • 利尿効果があり、体内の老廃物の排出を促進させる
  • 中枢神経を刺激して、自律神経の働きを高める
  • 動脈硬化、心筋梗塞、などの生活習慣病の予防に効果があり、心臓病、脳卒中、呼吸器疾患による死亡リスクが低下
  • 大腸がんや肝がんの予防
  • 2型糖尿病の血糖値の改善
  • コーヒーのリラックス効果によりストレスを軽減

このように様々な効果がありますが、何よりもコーヒーは「美味しい」んですよね。朝に飲む一杯のコーヒーは至福の時間であり、コーヒーによって一日が始まるという人も多いのではないでしょうか。もはや生活に欠かせない飲み物であると言えるでしょう。コーヒーを飲む時には、ぜひ地球の反対側ブラジルへも思いを馳せてみてください。