アガリクスのその後

昨年10月、「アガリクスががんに効く」などの誇大広告(薬事法違反)により「史輝出版」や健康食品会社「ミサワ化学」の役員が逮捕された事件は記憶に新しいが、その後アガリクスはどうなってしまったのだろうか?

サンパウロの日本語紙「ニッケイ新聞」の先日の記事を見ると、ブラジルのアガリクス生産者が深刻な打撃を受けていることが分かる。

日系健食業界の攻防=薬事法違反で逮捕者=アガリクス=イメージ・ダウンで生産激減

〇五年十月、アガリクス生産・加工業者に衝撃が走った。がんに効くと書籍で宣伝したなどとして、出版社の役員や健康食品販売会社の社長など計六人が、日本で薬事法違反(承認前の医薬品の広告、無許可販売)の疑いで逮捕されたのだ。 逮捕者が出るだろうと、その数カ月前から内部関係者の間でささやかれ、ブラジルにも情報が伝わっていた。事件は想像以上の深い爪跡を残した。

「知ってはいたんだけど、これほどの余波があるとは予想もつかなかった。問題の本も持っていますが、『末期がんの患者に効いた』など宣伝の仕方はあまりにも大げさ。アガリクスは薬ではありませんよ」。聖市近郊の町に住む、生産者はやり場の無い怒りをぶつけた。十年足らず前に生産設備を譲り受け、細々ではあるが、投資を行い、流行の健康食品をつくってきた。が事件のせいで、出荷がぴたりと止まった。イメージ・ダウンのために、注文が入らなくなったからだ。アガリクス一筋だった故に、壊滅的な被害を受けた。「商売変えを模索しているところです。設備を買ってくれる人なんかいないから、そのまま放置の状態ですよ」。

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業者の声を総合してみると、事件前と事件後では売上が三割~四割下がった。八割~九割減の被害を受けたところも。
アガリクスの流行のピークは〇二~〇三年で、以後売上は右肩下がりの傾向を見せ始めていた。知名度のある業者を例にすると、年間に六十トン(乾燥茸)の出荷量を誇っていたのが、四十トンにまで落ち込んだ。 今回の事件がそこに〃追い討ち〃をかける形になり、日本では新聞・雑誌の広告欄から瞬く間にその名が消えていったという。
「もう盛り返すことはないでしょう。値段を安くしたからといって、日本人が買ってくれるわけではない。流行の恐さをまざまざと知らされた事件だった。〃一本足〃で立つのはやはり危ない。多種の商品を、開発していかなければ」(サンパウロ大都市圏の生産者)。

果たして、今後どんな展開を見せていくのだろうか? 淘汰が進んでいくのは間違いない。(1)プロポリスと混合した商品にする(2)ブラジル国内の販路拡大(3)日本以外の国への輸出──などが考えられそうだ。

国内では加工品に対して規制が強いから、(1)(3)の方向に進んでいくのではないかと思われる。実際に、台湾向けの販売に力を入れ始めた業者も現れ始めた。前述の名の知れた業者は、米国のFDA(食品医薬品局)の販売許可を得て、同国への輸出を広げていきたい考え。「厚生労働省(日本)の取り締まりが強化されている。米国のお墨付きがあれば、日本人のイメージも変わっていくのでは」と望みを託している。

2006年1月11日(水)付 ニッケイ新聞より